IT税務では受託開発の売上計上、いつあげる?
IT事業を営まれている方の多くで受託開発で
システム・ソフトウェアを制作されている方が多いです。
IT業界で受託開発の【 システム・ソフトウェア制作 】を
税務会計で一般的に【 受注制作ソフトウェア 】と呼び、
受注制作ソフトウェアでは、売上計上方法は
大きく分けて以下の2つになります。
受注制作ソフトウェア(受託開発)の売上計上
受注制作ソフトウェアに関する売上の計上方法には
【 完成基準 と 進行基準 】の二つがあります。進行基準とは、制作の進行途上において、
進捗部分に成果の確実性が認められるときには
工事進行基準を適用し、それが認められない場合、
完成基準により成果物の提供が完了した時に、
【 一度に、売上および売上原価 】を計上します。
では、工事進行基準とは、売上をどのように、
いつ計上するのでしょうか。
売上の工事進行基準とはどんなもの?
【 工事進行基準の適用要件 】
工事進行基準適用には、次の要件があります。
・解約の可能性が低い、または解約されても
進捗部分には対価の支払いがある。
・完成させる能力がある、また環境が整っている。
・対価が契約で定められている。
・毎決算期ごとに収益総額、原価総額及び
進捗の見直しがおこなわれる。
<計算方法>
収益総額に進捗度を乗じて計算します。
進捗度とは、受注したソフトウェアの原価総額の
見積りに対し決算日までに制作した部分に対する
原価が占める割合です。
ただし工事契約基準において合理的であれば
直接作業時間比率法などその他方法も認めらます。
【 法人税法上の取り扱いはどうなるの? 】
平成20年度の税制改正により、制作期間が
1年以上で請負額10億以上受注制作ソフトウェアは
工事進行基準が、【 強制適用 】されます。
また損失が見込まれるものについても
進行基準が認められます。
【 受託開発売上の実務上の取扱い 】
工期が概ね3ヶ月のもの、工事規模が小さいものは
実務上、工事完成基準が採用されています。
工事完成基準のポイントは、
ずばり、【 売上と費用が対応している 】こと。売上が翌期に上がるのに費用のみ当期ではなく、
この場合は在庫で費用を翌期に繰り越すことで、
売上と費用を対応させるかが重要となります。
ITで特殊な契約がある場合の売上計上時期
【 分割検収条件契約 】
ひとつのソフトウェア開発プロジェクトを
幾つかのフェーズに分けて契約を締結し、
フェーズ単位で検収を行う場合には、
以下要件を満たせばフェーズ単位で売上計上できます。
・フェーズが顧客に価値ある成果物提供である。
・対価が確実に請求されること、
また対価が適切な区分で分割されていること
【 複合契約 】
ソフトウェアの提供に加え、
以下のような異なる種類のサービスを一体で
販売する契約を複合契約といいますが、
この場合サービスごとに金額を把握できる場合は
それぞれ収益計上する必要があります。
例えば、
・保守サービスが含まれる契約
保守期間にわたり収益認識する。
・アップグレードサービスのある契約
ユーザーの利便性を高め、顧客を抱え込み、
新製品へ買い替え促進も図れる。
アップグレードできる期間で収益認識する。
・ハードウェアと合わせて販売される契約
ソフトウェアとハードウェアが区分できる場合、
それぞれ提供が完了した時点で収益認識するが、
有機一体で区分不可能な場合は、
ともに提供が完了した時点で収益認識する。
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執筆者・文責 税理士 水野智史
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